冬の季語『初氷(はつごおり)』

冬の季語『初氷(はつごおり)』

解説

その年の冬に初めて観測できた氷のことを言います。わたしの地方ではだいたい道路の水たまりでしょうか。池の水でもいいですし、汲み置きの水でもよくてとにかく初めて氷が見れた時に使う季語です。

ちょっと童心に返って嬉しいような心地がしますよね。あるいはこれから始まる厳しい冬の予兆のようなものでもあります。

初氷の例句と鑑賞

初氷夜も青空の衰へず 岡本眸

鑑賞:初氷が観測できた日。初冬~仲冬ですよね。その頃になると空は透明感が高くなります。青空というと日中のことのように思いますが、夜空にも青が見える時がありますそのことを「衰えず」と捉えたところが素晴らしいところではないでしょうか。

美しい一句だと思います。

糸で明くからくりの目や初氷 宇佐美魚目

鑑賞:からくり人形の目のことでしょう。からくり人形の顔というのは張り付いたような表情です。人間の表情のように豊かではありません。氷に響き合っていますよね。

そして、その目は糸で明く(あく)わけです。ピンと張られた糸によって開く目にフォーカスを当てることで、内部構造とともに大写しの人形の目がイメージされます。これが作者にとっての初氷とでも言えるものだったのかもしれません。

静謐な一句です。

初氷踏みにブーツを穿いて来し 後藤夜半

鑑賞:可愛らしい一句です。初氷を見つけて、それを踏むためにわざわざブーツを穿いてきたというわけです。本当に童心に返ったんでしょうか。

あるいは、子供を見ていて作られたとも考えられます。俳句は短いですから主語が省かれることが多いので、誰がブーツを穿いてきたのかはわかりません。恋人かもしれないし、子供かも、自分かも、わかりません。

だからいいのです。それぞれが想像の中の場面を動かして遊ぶのが俳句ですから。

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冬の俳句の作り方

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