初心者のための簡単な俳句の作り方

新型コロナ肺炎で大変な時期ですね。緊急事態宣言も発令されました。外出を控えているとストレスも溜まります。

自粛期間の楽しみに「俳句」をやってみるというのはいかがでしょう?紙と鉛筆さえあれば十分に楽しめます。

例えばこんな季語もあるんですよ。

冬の季語『マスク』

みんなでこの危機を乗り越えましょう。

俳句ってなに?

俳句の基本。俳句は十七音

俳句は十七文字でなく十七音。

俳句を作るのに、十七文字と思っている人も多いのですが、それは間違いです。

十七音です。

説明しますと

古池や蛙飛びこむ水の音

読み方は
ふるいけやかわずとびこむみずのおと

となり、これは確かに十七文字です。しかし、

貰ひ来る茶碗の中の金魚かな

読み方は
もらいくるちゃわんのなかのきんぎょかな

となり、十九文字になります。「ちゃ」と「ぎょ」が二文字になるからです。しかし俳句においてこれは一音として数えます。

他にも小さな「わっか」などに使われている「わっ」のような言葉も一音として数えます。
十七文字というと間違いやすいので十七音と覚えておきましょう。

初心者のための簡単な俳句の作り方

もっとも簡単な俳句の作り方を説明します。

上に書いたように俳句というのは季語を含む五七五の十七音で出来ています。

もっとも簡単に作ろうと思えば、

『季語』+『季語に関係の無いこと』

で作るというやり方があります。

「コスモス」という季語で作ってみましょう。

「コスモス」は四音なので、五音にするのに何か足す必要があります。「コスモスの」「コスモスを」「コスモスに」などなど様々なものがつくのですが、ここは俳句らしく「コスモスや」としましょう。
「や」は切れ字と呼ばれ、強い詠嘆を表します。

簡単に言うと「コスモスや」と書いたら「素晴らしいなぁコスモスが咲いているんだなぁ」というような意味になります。

コスモスやもうすぐ妻の誕生日

あまり大した句ではないかもしれませんが、どうでしょうか?あくまで「コスモスや」以降はコスモスと関係のないことを書きました。

失敗例を挙げましょう。

コスモスや風に揺れたるこころもち

一見いい句に見えるかもしれませんが、これは俳句としては失敗と言えます。「風に揺れる」というのはすでに「コスモス」という言葉の中に含まれているからです。

風に揺れる。ピンク。儚げ。などコスモスという花にもつイメージはコスモスに任せることが俳句のコツです。

コスモスや風に揺れたるこころもち

この中の「風に揺れたる」はコスモスの説明に過ぎないわけで、書かなくてもいいことなんです。

これを推敲するならば、「風に揺れたる」を変えます。

コスモスや医者に行きたいこころもち

推敲前はコスモスしか見えなかったのが、コスモス+人物のイメージが広がって来ませんか?

⇒季語と関係ないことを書くというのは、季語の説明や季語が持つ意味の重複を避けるという意味です。

季語の力

さて、俳句にとって季語はどんな力をもっているんでしょうか?

コスモスやもうすぐ妻の誕生日

を例に考えてみましょう。
これを例えば

ひまわりやもうすぐ妻の誕生日

コスモスの句と比べてどうですか?

コスモスの句に出てくる妻よりひまわりの句に出てくる妻の方が若く元気な気がしませんか?

このように季語はその句全体に影響を及ぼします。句の全体をラッピングしているようなイメージです。ラッピングの具合で雰囲気は変わりますよね。

季語はそのように句のイメージを変えてくれます。色々な季語を当てはめてみて一番しっくりくるものや面白いものを作ってみてください。まずは習うより慣れろ。

怖がらずにたくさん作ってみましょう!

中にはこのような状態の句を「季語が動く」つまりどんな季語でも成立するという方もおられますが、まずはこのような作り方に慣れていくことが大切だと思います。

俳句の『切れ』の解説

俳句は『切れ』がないとダメだという人もいますが、個人的には『切れ』があった方が句が引き締まるという認識をしています。『切れ』は俳句独特の考え方ですから、知識だけでなくたくさんの俳句に触れて、たくさん作ってみて初めてわかってくるものです。感覚的にわかってくるのに少し時間がかかりますので、焦る必要はありません。

さて、『切れ』とは何か?について触れておきましょう。
俳句の『切れ』というのは文字通り内容を切りわけたり、余韻を持たせることにあります。短い詩ですから途中で内容を分け、余韻を持たせることで膨らみを生むことができるのです。また、切ることでその直前が強調されたりもします。強調は詠嘆(感動)のポイントをわかりやすくします。

例)わたしの前に今真っ赤なバラが差し出された……(中略)……空には雲ひとつなかった。

と書かれていたら、バラが目の前に残されたまま空の映像に移り変わりませんか?これが切れの直前が強調されるということです。

もう一つ大事なこと、それは一句の中に『切れ』は1つということです。2つの切れが入っている句は「三段切れ」と呼ばれあまり好まれません。17音の中に切れが2つも入っていると単語の羅列に近くなるからと覚えておいていいと思います。ただ、これも絶対ではなく「目には青葉山ほととぎす初鰹」という有名な句もあります。(この句で切れはどこかというと「目には青葉…山ほととぎす…初鰹」の「…」の部分になります。)あくまでお作法ということです。

まとめると

『俳句の切れ』は
・内容を切り分ける(余韻をもたせて表現を大きくする)。
・詠嘆(感動)のポイントをわかりやすくする。
・一句の中に切れは一つ。

もちろんこの説明は大雑把で、追求するともっともっと深い話になります。現代でも切れについて研究を続けている人がいるくらいですから、とりあえずはこのくらいを覚えておいて下さい。

切れ字の解説

俳句には『切れ字』というものが入っていることが多いです。有名なところでは「や」「かな」「けり」です。

閑さや岩にしみ入る蝉の声
流れ行く大根の葉の早さかな
いくたびも雪の深さを尋ねけり

この句の切れの部分は

閑さや…岩にしみ入る蝉の声
流れ行く大根の葉の早さかな…
いくたびも雪の深さを尋ねけり…

「…」部分が切れです。
「かな」と「けり」は一番最後に切れが入っています。余韻を残すパターンですね。2句目は大根の葉の流れる「早さ」が3句目は何度も「尋ねた」ことが感動のポイントです。一気に読ませて最後にジ~ンと来るパターンだと考えましょう。「かな」はちょっと飄々とした軽み(かるみ)の雰囲気もありますね。

1句目は途中に切れが入っています。「しずけさ」が感動のポイントで、「閑さや」の後に余韻が入ります。「しずけさ」があるからこそ、岩にしみ入る蝉の声も効いてくるわけですね。
こちらの方が俳句としてはわかりやすいかもしれません。

ちなみに「〇〇や」で始まり、最後を体言止めにするというのは俳句の典型的なパターンです。もちろん、その中に季語も入れましょう(別になくても構わないのですが、それは別の機会に)。

代表的な『切れ字』は「や」「かな」「けり」ですが、松尾芭蕉は「切ろうとすれば全ての文字が切れ字になり、切ろうと思わなければ切れはどこにも存在しない」と言っています。

最後に、代表的な切れ字「や」「かな」「けり」は2つ以上一句の中に存在してはいけません。上に書いた「三段切れ」になってしまうからです。

有名な句

降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男

実はこの句、ルールを破った句なんです。ですがあまりにも良い句ですよね。ここに書いているお作法は、失敗しにくいというだけの話ですから、絶対破ってはダメというわけではありません。あえて破ることも悪いことではないんです。ただ、基本的な考え方は押さえておきましょうというところです。

おすすめの歳時記

俳句を作るのに必要なもの、紙とペン。そして歳時記です。今はネットでも調べられますが、歳時記を見ながら作るのと別の楽しさやメリットがあります。

ひとつは集中できること。ネットだとついつい他のことに目が行きますが、歳時記と紙とペンだけになると俳句モードになってきますからね。

もうひとつはいろんな季語に触れられること。例えばネットで本を買えるのに本屋さんに行く楽しみはなんだと思いますか?色々なジャンルの本が目に飛び込んでくることです。そうすることによって思いも寄らない出会いがある。歳時記も同じでパラパラめくりながら季語を探していると意外な季語に出会えて、それが俳句作りに役立つことも数多くあります。

まずは定番、『合本俳句歳時記』です。季節ごとに分かれたものもあるのですが、この歳時記は一冊にまとまってくれています。わたしもここから始めました。でもちょっと辞書みたいでとっつきにくいという人もいるかもですね。

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