冬の季語『クリスマス』
十二月二十四日が『クリスマス・イブ、聖夜(せいや)』となりこれも季語である。また『クリスマスツリー、聖樹(せいじゅ)』も季語であり、『サンタクロース、サンタ』も季語として扱われることが多い。
子供から若者たちを中心に賑わう日であるため俳句に詠まれることが多い。
季語『クリスマス』の俳句と鑑賞
へろへろとワンタンすするクリスマス 秋元不死男
鑑賞:クリスマスといえば豪華なディナーを想像してしまうが、この俳句ではワンタンを啜っている。中華料理である。しかも「へろへろと」すすっているわけであり、恐らく中年男性ではないかと思われる。ワンタンをすする中年男性の背後では世間がクリスマスの賑わいを見せている。対比がよく効いた句。
個人的にはワンタンという料理のチョイスが素晴らしく、ワンタンという白くふわふわしたものがクリスマスのイメージを損ねすぎることなく効果的である。
美容室せまくてクリスマスツリー 下田実花
鑑賞:クリスマスツリーを季語とした句。美容室がせまいと書かれてあるが、恐らくクリスマスツリーが大きいのだろう。つまり、店のサイズに会わないクリスマスツリーが飾ってあるのだ。それはなにかにつけて通行の邪魔になっている。だが、せっかくのクリスマスなので飾っておきたいし、客の方もそれに何かを言うつもりはない。
下町の小さな美容室の小さな一コマに庶民のクリスマス気分がよくあらわれている。
聖樹の灯心斎橋の灯の中に 石原八束
解説:作者の読み方は石原八束(いしはらやつか)。
この句は「聖樹の灯…心斎橋の灯の中に」のように『切れ』がある。「聖樹の灯」「心斎橋の灯」と似たフレーズが登場するところ、「心斎橋」という具体的な地名が出てきているところが学ぶところだろう。
意味合いとしては、クリスマスツリーの灯が心斎橋のたくさんの灯の中にあるのだなぁ。という少し遠目に見た感じである。クリスマスツリーにフォーカスしたのではなくちょっとズラしたところに句の良さがある。クリスマスツリーの灯は美しいけれども、それも街の中(人間の生活の一部)なのだなぁという感慨だろう。心斎橋という地名が現実的でピリリっと引き締まっている。
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