新年の季語『初夢(はつゆめ)』
解説
正月元日から二日にかけて夜見る夢のこと。昔は大晦日から元日にかけての夜の夢のことを指していたが、近年大晦日に夜更かしする人が増えたため元日から二日となった。その夢の内容によって一年を占う意味がある。「一富士二鷹三茄子」と呼ばれ、吉兆とされる。めでたい夢を見るために宝船の絵を枕の下に敷いたりしていた。『獏枕』『初枕』も同じ意味の季語である。
季語『初夢』の俳句と鑑賞
初夢の唯空白を存したり 高浜虚子
解説:高浜虚子という有名な俳人の初夢の句。「存したり」は「そんしたり」と読み、「存在する、残る・とどまる」という意味である。句の意味は
初夢の空白だけが残っている。初夢の空白だけが存在している。
となる。初夢というめでたいイメージに唯の空白を持ってきたというのが斬新で、花鳥諷詠を掲げながら自らは色々と冒険的な句も作った虚子らしいと句かもしれない。なんとなく不気味な感じのする句であるが、正月ボケともとれば実にノンキな風にもとれる。
初夢で逢ひしを告げず会ひにけり 稲畑汀子
解説:高浜虚子の孫である稲畑汀子(いなはたていこ)の句。句の意味は
初夢で逢ったことを言わないで会いました。
というところで、二回「あう」が出てきますが、それぞれ漢字が違いますね。「逢う」は親しい間柄に使う「あう」で、「会う」は単に人と「あう」です。つまり、初夢では親しく逢ったわけで、現実では単に「会った」ということになります。恋する女性の句ですね。もちろん、そうじゃない場合もあり得るわけですが、そのように読まれたがっているような気がします。
季語「初夢」もこのように自由に使うとまた楽しいものです。
初夢になにやら力出し切りし 岡本眸
解説:岡本眸(おかもとひとみ)の句です。意味は簡単ですね。
初夢になんだか力を使い果たしてしまった。
一体どんな夢だったのでしょうか。「なにやら」と書かれていることから内容はたぶん覚えていないのでしょう。でも朝起きてみるとクタクタだったと。かなりかわいい句です。
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