冬の季語『くしやみ(くしゃみ)』

冬の季語『くしやみ(くしゃみ)』

解説
『くしゃみ』も冬の季語です。しかし俳句では『くしやみ』『嚔(くさめ)』『くつさめ』などとも言います。古い言い方ですね。どうして俳句では古い言い方をするかと言うと、その方が格調が出るからだとしか言いようがありません(それぞれ意見はあるでしょうが、個人的には)。

さて、くしゃみですが、機能的には2つあるそうです。ひとつは体温調節。鼻の中の温度が下がると脳が体を震わせて体温を上げようとするのでくしゃみが起こります。
もうひとつは、鼻の中に入った異物をくしゃみの勢いで外に出そうとするものです。鼻水が出ているときのくしゃみもこれに当たりますね。

いずれにしても、鼻の粘膜が刺激を受けて起こる反射運動のようです。

俳句的にはユーモラスな雰囲気で使われることが多いようです。「くさめ」の句は可愛くていいですよ。

季語『くしやみ(くしゃみ)』の俳句と鑑賞

くさめして我はふたりに分れけり 阿部青鞋

鑑賞:くしゃみをしたら自分が2つに分裂しましたよ。
という意味の句です。なんとも大げさな良いようでしょうか。でも、この句の言ってることはなんとなくわかりますよね。俳句ではこういう「なんとなくわかる」という感じがとても大事だったりします。

この俳人は飄々(ひょうひょう)とおもしろい俳句を作る人で、

要するに爪がいちばんよくのびる

こんな句もあります。面白いですよね。

嚔して仏の妻に見られたる 森澄雄

鑑賞:くしゃみをしたら仏のような妻に見られていたよ。

ただの日常風景ですが、「仏の妻」ですから美しく品のある奥様なのでしょう。一方で自分はくしゃみという無防備をさらけ出している。「仏の妻」をいかに豊かに想像できるかがこの句の鑑賞の鍵です。妻が微笑みがリアルであればあるほど、くしゃみという人間くさい行動との対比が面白くなります。

また、くしゃみをすると人に噂されているというようなことも言われていますから、そうなると夫婦の関係まで見えてきそうです。

東京にくつさめ一つ到着す 山田みづえ

解説:「東京に」がいいですよね。到着したのは誰なのか書かれてはいませんが、その人物(もしかしたら自分かも)を差し置いて、「くつさめ」つまりくしゃみが到着したということです。

おそらくちょっとユーモラスな人物か、皮肉で言っているのでしょう。

「東京」という地名は日本の首都です。そのような主要都市にくしゃみが到着したからいい。しかも「一つ」ですから。

俳句に数を入れることは多々ありますが、「ひとつ」か「百」や「千」で小さいか大きいかを表し、後は「三つ」くらいでリアルさを出すと良いと言われます。本当の数じゃなくてもそのあたりは作る俳句に合わせましょう。

こちらも参考にどうぞ

冬の俳句の作り方

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