新年の季語『寝正月』
解説
元日を含む正月休みを寝て過ごすこと。正月は多くの仕事が休みなので、一日中ゆっくりと過ごすことができる。日頃出来ないダラダラした過ごし方をする正月も良いもので、よく
「どんなお正月でした?」
「いやぁもうわたしなどは寝正月で」
などという会話を聞くことも多いが季語であることを知るひとは少ない。
季語『寝正月』の俳句と鑑賞
次の間に妻の客あり寝正月 日野草城
解説:大好きな句です。「次の間」というのはメインの部屋に隣接する控えの部屋のこと。この句は客ありの後で切れが入ります。つまり
次の間に妻の客あり…(ここが切れ)…寝正月
という具合になります。意味としては、
控えの部屋に妻の客が来ている。わたしは寝正月を過ごしている。
という感じになります。妻の客はわたしにはあんまり関係ないのでのんびり寝正月を過ごしているというわけです。幸せで平和が素敵です。
旅行書の南海青し寝正月 大島民郎
解説:この句も切れを説明しておきましょう。
旅行書の南海青し…(ここが切れ)…寝正月
句の意味は
旅行書の南海は真っ青だ。ま、わたしは寝正月を過ごしているが…。
という感じでしょうか。「寝正月」という季語の中には「寝正月を過ごしている。または過ごす」というようなことも含まれています。寝正月の最中に旅行書をペラペラめくっていると南の方の国の海が真っ青だった。というわけです。アクティブな旅行書と寝正月の対比が面白い句です。
寝正月なれど天地広くゐる 森澄雄
解説:今度はスケールの大きな句です。
寝正月を過ごしているけれど、天地(あめつち)は広く存在しているのだなぁ。
というような意味です。寝正月を過ごしながら気持ちだけは大地や空の広さを感じているというわけです。
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