春の季語『入学』
解説
小学校・中学校・大学・専門学校どんな学校でも入学は春ですから、春の季語になっています。しかしながら入学と言えば小学校1年生の入学が一番印象に強いかもしれません。
また『入学児』というように、入学する児童をそのものを指す言葉も俳句ではよく使われます。『入学式』も同様。『新入生』『一年生』『進学』『入園』『入園児』も季語です。
季語『入学』の俳句と鑑賞
入学の子に見えてゐて遠き母 福永耕二
鑑賞:母は少し遠くにいるのですが、入学する子供にはしっかり見えているという句ですね。母親の心配そうな様子が伝わってきてとても良い句です。
この句で重要なのは、母の心配や入学児の不安など一切の心情が書かれていないことです。情景だけが全てを物語っています。それでいながら、全てが伝わってくるようです。
こういう句が俳句では理想形のひとつとされます。
入学児花壇の石を裏返す 北大路翼
鑑賞:入学児童が花壇の石を裏返した。それだけの俳句ですが、やんちゃな感じが伝わってきていいですよね。作者である北大路翼もかなりやんちゃな感じなので、昔の自分と重なったのかもしれません。
俳句に置いて、主語+「は」や主語+「が」の「は」や「が」は省略しても構わないとされています。この句の場合だと、「入学児が~~」となるはずですが、この句の形になっています。
一人だけ口とがらせて入学す 福島胖
鑑賞:この「入学す」の形は覚えておくと便利です。「入学する」という意味ですが、「入学す」と書くことで五・七・五に当てはめやすくなります。
さてこの句ですが、何か嫌なことでもあったのでしょうか、ひとりだけちょっと拗ねた(すねた)様子で入学したようです。入学の季語が全体を可愛らしく包み込んでいます。
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