春の季語『囀り(さえずり)』
解説
言葉からして爽やか春の陽気が感じられます。春になるとオスの鳥は求愛のために、あるいは縄張りを知らせるために鳴きます。それを『囀り』と言い、春の季語になっています。『鶯(うぐいす)』や『雲雀(ひばり)』『頬白(ほおじろ)』などが春に囀る鳥の代表です。
『鳥の恋』や『鳥交る(とりさかる)』も春の季語です。
季語『囀り(さえずり)』の俳句と鑑賞
囀やピアノの上の薄埃 島村元
鑑賞:一字で「囀(さえずり)」と読みます。「り」が省略されているバージョンもあると覚えておいて下さい。
さて、「ピアノの上の薄埃」はなんでしょうか?おそらく陽が差し込んできたのでしょう。「囀り」は早朝に多いですからね。春の日差しが部屋の中のピアノにまで当たっています。「薄埃」があるということはちょっと使われていないのでしょうか。弾く人が家を出たのかもしれません。
春は卒業の季節です。大人になった彼女(もしくは彼)もどこかで恋をしているのかも。
囀りをこぼさじと抱く大樹かな 星野立子
鑑賞:大樹ですから、鳥がいっぱいいるのでしょう。その鳥達の囀り(さえずり)をこぼさないように抱いている。という句です。
一般的に俳句においては擬人法は嫌われがちです。短い俳句の中でそのような見え見えの技法を使うことは子供っぽく見えたりするからでしょう。しかしこの句はそんな風に見えません。すんなりと頭の中に入ってきます。
それだけイメージがしっかりしているからだと思います。大好きな一句です。
囀や転ばぬ先の杖は持たず 鈴木真砂女
鑑賞:「や」で切れています。
囀や…(ここが切れ)…転ばぬ先の杖は持たず
「囀り(さえずり)」「転ばぬ先の杖は持たない」この二つの関係は?となりますね。上にも書いたように囀りは求愛の行動です。ですから、恋の句として読んでいいんじゃないでしょうか。
恋に対して「転ばぬ先の杖」なんかもたないわ!そんな女性の意気込みが伝わってきそうです。
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