新年の季語『去年今年(こぞことし)』

新年の季語『去年今年(こぞことし)』

解説
去年と今年とが一晩で変わることをいう。簡単に言うと「ゆく年くる年」を季語にしたと言えばわかりやすいかもしれない。
去年と書いてこぞと読む
高浜虚子の句によって定着した季語だと言われている。その句とは
「去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子」
である。

去年今年の名句と解説

去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子

解説:去年と今年を棒のようなものが貫いている。というだけの意味である。わかったようなわからないような句であるが、高浜虚子にはこのような不思議な句が多い。客観写生と花鳥諷詠を標榜(ひょうぼう)していたはずなのに、全然客観的に写生していないのが面白い。

信ずれば平時の空や去年今年 三橋敏雄

解説:三橋敏雄という俳人は実にダンディな俳人である。戦争などをテーマとした俳句もたくさん作っている。「平時の空」という言葉遣いがいかにもニュース的な感じで、逆に非常事態の空、つまり戦争を想像させる。しかも「信ずれば」とある。

「信じていれば叶うだろう」というポジティブな意味なのか。「戦争が迫っていようと信じていればそう見える」というネガティブな意味なのか。言葉のムードだけで読者を混沌に落とし込むのがこの作者のすごいところである。

去年今年水湧いて水盛り上がり 廣瀬直人

解説:湧き水というのは水が盛り上がっているように見える。いかにも当たり前の風景だが、去年今年という季語が働くことで水も喜んでいるかのようなめでたさがある。わざわざ「水湧いて水盛り上がり」などという持ってまわった書き方はそこをジッと見つめていたからだろう。
また湧いている水というのは同じように見えて一ヶ所にとどまってはいない。時の流れも同じである。

お正月と言えば、色んなところから人も湧いて出てきて色んなところで盛り上がる。そんなことも想像してしまう。

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