新年の季語『正月』

新年の季語『正月』

解説
一般的に『正月』といえば1月1日~3日までの三が日のように言われますが、本来は1年の最初の月、新年を迎えた月全体を指します。お正月と言えばイメージが出やすいですし子供から大人まで俳句も作りやすいのではないでしょうか。

新年の俳句の作り方にも書いたのですが、正月の俳句を作るコツはめでたくなりすぎないことです。というのも正月という言葉の中にめでたさはすでに含まれています。俳句という短い詩の中で重複する言葉を使うのはもったいないことです。

※ただし、例えば職場や親戚の集まりなどそういう時に俳句を作る場合、つまり素人の人に見せる場合はできるだけおめでたくしてもいいと思っています。俳句の世界では挨拶句というものになります。相手にプレゼントする句ですから俳句の制約からはみ出ても伝わることが重要なのです。

季語『正月』の俳句と鑑賞

正月や一歯欠けたる妻の顔 佐野青陽人

解説:渡辺水巴の下で活躍した俳人です。

意味としては、正月だなぁ。妻の顔に歯が一本抜けているなぁ。

それだけのことです。歯が抜けているくらいですから、中年以降の夫婦だということがわかりますね。また、そのことに改めて気づくというのは正月だからでしょう。普段は忙しく妻の顔をまじまじと見つめることもなかったというわけです。

庶民の暮らしの中の一句ですね。ただ、そんな妻の顔を醜いと思ってるようには見えません。わざわざ俳句にしたくらいですから。

正月の和服つめたき襟合す 百合山羽公

解説:意味はシンプルですね。

「正月につめたい和服の襟を合わせた」

それだけです。ただ、ここで正月という言葉が効いてきます。正月でなければただの冬の和服なのですが、正月といえばどこかキリっとしなければならない事情も多いんじゃないでしょうか。例えば親戚の集まりとか。仕事関係の集まりとか。

そうなるとそのこの冷たさは正月の持つ厳しさに繋がってきます。正月と言ってもまったりするばかりではないということですね。そういう正月の一面をうまく切り取っています。

※ちなみに、「冷たし」だけで冬の季語ですが、新年の俳句にはよくこのような季重なりが出てきます。季重なりは一句の中でメインとなる季語がある場合許されるとも言われていて、新年の季語はとても強いですから多少の重なりは大丈夫だったりします(俳人それぞれの考え方によりますが…)。

子を持ちて姪美しきお正月 福田紀伊

解説:これもお正月の親戚の集まりの中の一句でしょう。

「お正月で久しぶりに会ったが子供ができて、姪(めい)は本当に美しくなったなぁ。」

というような意味でしょう。正月にしか合わない姪っ子に子供ができた。その姪を美しく思ったというところです。ちょっと艶っぽくもありますね。というのも子供ができるということは女性として一人前になった証拠でもあります。それまではあくまで子供の頃の姪っ子だったのでしょう。女性としての姪っ子にハッと気づいた瞬間だったのでしょうね。

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