春の季語『啓蟄(けいちつ)』

春の季語『啓蟄(けいちつ)』

解説
二十四節気(※)の一つで、陰暦2月ごろにあたります。今の暦では3月6日ごろになり、「啓蟄」の「啓」は開くの意味で、「蟄」は冬眠していた土中の虫のことを指します。というわけで、この季語の意味は「土中の虫が出てくること。また、出てくる頃のこと」となります。

『蟻穴を出づ(あり、あなをいず)』『地虫穴を出づ(じむし、あなといず)』また、『蛇穴を出づ(へび、あなをいず)』『蜥蜴穴を出づ(とかげ、あなをいず)』も似た意味ですね。

昔の考えでは虫も爬虫類も同じだったようです。要するに、「春になりみんなが顔を出してきましたよ」ということです。

また、ちょうどこの時期に『春の雷』が多いことから、それを『虫出しの雷』と呼ぶようになりました。目覚まし時計のような感じですね。

※二十四節気:1年を24等分しその節目節目に名称を与えたもの。

季語『啓蟄(けいちつ)』の俳句と鑑賞

啓蟄や生きとし生きるものに影 斉藤空華

鑑賞:「や」で切れる俳句です。

啓蟄や…(ここで切れる)…生きとし生きるものに影

最後の「影」が効いていますね。地面から出てきた虫達にもすぐに陽の光が降り注ぎ、影を作ります。当たり前のことですが、当たり前のことも季語との組み合わせで別の意味を帯びてくるんです。

この句は、全ての生き物に陽の光が降り注ぐことと同様に、全ての生き物には影(善悪的な意味で)があるということも伝えています。

春という季節が余計に意味深に感じられます。

※「切れ」とは何かはこちらの記事を

啓蟄の花屋から水流れけり 大島雄作

鑑賞:なんでもないことを季語と組み合わせるパターンの句です。「啓蟄の花屋」というのは特別な気がしませんか?「啓蟄」は「土中の虫たちが出てくる」という季語です。だから、植物とも関係が深い。これから春らしくなってくるという感じもあります。

花屋さんの店先はこれからどんどん賑わうことでしょう。水だってたくさん必要です。命を育てるための水という感じが一層してきます。

同時に花屋さんの花たちは自然から切り離されています。啓蟄という季語は自然界の出来事ですから、そこに少しだけ影も感じられます。

啓蟄の庭とも畠ともつかず 安住敦

鑑賞:こういう句が好きです。確かにこういう場所ってありますよね。庭なの?畠(はたけ)なの?ってところが。

庶民の家という感じが素敵です。しかし、「啓蟄の」とすることでそんなことに関係ない虫たちの姿が見えてきます。庭にするか、畠にするかはあくまで人間の決めたこと。

そこに住む虫たちにとってはどうでも良いことです。「庭とも畠ともつかず」と書かれてありますから、この家の住人にとってもどうでも良いことなのでしょうね。かわいい一句です。

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