春の季語『春めく(はるめく)』

春の季語『春めく(はるめく)』

解説
立春を過ぎてもまだまだ寒い日もあります。『余寒』『冴返る』『春寒し』という季語もあるくらいですから昔からそのようなものだったのでしょう。そんな中自然や街の中に春らしいものを感じることがありますよね。そんな時に使う季語です。

『春動く(はるうごく)』『春兆す(はるきざす)』も同様の季語です。

※太い文字は季語です。

季語『春めく』の俳句と鑑賞

春めくやわだちのなかの深轍 鷹羽狩行

鑑賞:素晴らしい一句です。轍(わだち)というのは馬車などが進んだあとにできる車輪の跡のことです。現代では馬車はありませんが、自動車にも使っていいでしょう。
また、轍(わだち)という言葉には人生の来し方のような意味で使われたりもします。

この句の意味はシンプルです。「春めいてきたなぁ。轍に深いものと浅いものがあるよ」と、それだけなのですが、寒さと暖かさが交互にやってくる早春の景色に近いものがありますよね。また、最初に出てくる轍を「わだち」と平仮名で書かれています。平仮名だと優しい雰囲気になりますから春っぽさを感じます。そんな轍の中に深轍(ふかわだち)がある。深いわけですから重量のあるものが通ったのでしょう。それらを眺めて自然の移ろいやなんかに思いを馳せているわけです。

春めきの穴があつたら覗く癖 大塚凱

鑑賞:若手俳人である大塚凱の一句です。

面白い俳句ですよね。まず中七と下五はの意味はわかります。「穴があったら除く癖」ですから、心当たりのある人も多いんじゃないでしょうか。され、上五の「春めきの」が問題です。

わたしは俳句は「できるだけ素直に受け取ってみる」ことを信条にしていますので、「春めいているような感じがする穴」と受け取りました。どんな穴なのかはわかりませんが、冷たい感じのする穴は覗きたくないものです。だから春の感じのする穴なんだろうなと。例えば、穴の中で寝起きのカエルが居そうな穴。そんな穴を思い浮かべました。

※五七五のうち、上の五音を上五。下の五音を下五という。

ゴマドレッシングの変な明るさ春めきぬ 北大路翼

鑑賞:歌舞伎町の芭蕉と異名を持つ北大路翼の一句です。

こう書かれるとゴマドレッシングには変な明るさがあるような気がしてきます。明るいだけならシーザードレッシングなんかはほとんど白ですから明るいです。ここで書かれているのは変な明るさです。例えば、ゴマという言葉の明るい響きかもしれませんし、ドレッシングを何にするか尋ねられた時に「ゴマドレ!」と、それを選択する人の明るさも含まれているのかもしれません。

そのような微妙な明るさだからこそ、『春めく』という季語にマッチしているわけですね。素晴らしい一句です。

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