春の季語『春の風邪』

春の季語『春の風邪』

解説
『風邪』自体は冬にかかりやすいので冬の季語なわけですが、『春の風邪』は春の季語です。春ってついてますからね。春という季節は寒暖の差がありますから風邪をひくことも多くなります。また冬のようにひどくない代わりに長引く傾向があると言われています。
統計上どうかはわかりませんが、確かにそのような気もしますよね。

春という季節自体がぼんやりとしたイメージを持っていますので、『春の風邪』も風邪のツラさだけでなくどことなくふわふわしたような感じを持っています。

もちろんこれは季語のイメージですので、「わたしのひいた春の風邪はひどかった!!」と怒らないで下さいね。
短く『春風邪』と書くこともあります。

季語『春の風邪』の俳句と鑑賞

病にも色あらば黄や春の風邪 高浜虚子

鑑賞:個人的には少しゴチャゴチャしていてすっきりしていないような気もしますが、内容が上手すぎて唸ってしまう一句です。おわかりかとは思いますが念のために読み方を書くと

「やまいにも いろあらばきや はるのかぜ」

です。春の風邪というものは、例えば病気にも色があるならば黄色だ。という内容です。「色あらば」は「色があるならば」という意味です。春の風邪を例えてみたという句です。

ポイントは『春の風邪』を最後に持ってきているところじゃないでしょうか。春の風邪が最初にでてくれば、わかりやすくなるのですが驚きはありません。「病にも~」と始まると「ん?なんだ重いテーマかな?」と思ってしましますが、そこから春の風邪の話しかぁ。とほっこりします。これも『春の風邪』という季語の効果でしょう。

マダムX美しく病む春の風邪 高柳重信

鑑賞:不思議な句ですね。高柳重信という人は金子兜太などと並んで俳句を推し進めた重要人物です。彼は多行俳句(何行かにわけて書く)を多く残していますが、このように一般的な形式(?)の俳句も作っていて、面白い作品が多く出てきます。

さてこの句ですが、出だしの「マダムX」が不思議ですね。スパイ映画かSFかという感じがします。アンドロイドのような。そのマダムXが春の風邪を美しく病んでいるというわけです。

普通の風邪だとなかなか美しくなりませんから、ここは『春の風邪』がぴったりです。

しんがりは妻が勤めぬ春の風邪 石塚友二

鑑賞:家族で春の風邪をひいたのでしょう。一生懸命看病してくれていた妻がとうとうかかってしまった。そんな一句です。みんなが元気になり気を抜いたのでしょうか。

「しんがり」という戦(いくさ)のような言葉遣いが家族のドタバタ感が出ていてかわいいですね。

これも『春の風邪』だから良いようなものの、冬にかかる風邪だと大事になってしまいます。

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