春の季語『春雷(しゅんらい)春の雷(はるのらい)』

春の季語『春雷(しゅんらい)春の雷(はるのらい)』

解説
土中から虫が出てくる『啓蟄のころにその年で初めての雷が鳴り出します。それを春雷と言って、それを合図に虫たちが出てくるのではないかと昔の人は考えました。なので『虫出しの雷(むしだしのらい)』とも言います。

そんなこともあって、『春雷』は各季節にある雷(かみなり。それだけでは夏の季語)の中でも特別な意味をもっています。

『虫出し』『初雷(はつらい)』も同様の季語です。

季語『春雷(しゅんらい)春の雷(はるのらい)』の俳句と鑑賞

あえかなる薔薇撰りをれば春の雷 石田波郷

鑑賞:「撰り」は「えり」と読んで選ぶという意味です。また、「あえかなる」は「か弱い」という意味です。ご存知だとは思いますが、「薔薇」は「バラ」ですね。
というわけで、意味としては

「か弱い薔薇を選んでいたら春の雷が鳴った」

という意味です。

映画のワンシーンのようですね。これから何かが起こりそうな感じがします。春の雷も恐ろしい雷ではなく、恋の季節へのファンファーレのようにも感じられます。「あえかなる」という普段使わない言葉もつい調べてみたくなるような響きがあります

春雷や暗き茶の間に妻と客 渡邊そてつ

鑑賞:『や』で切れていますね。

春雷や…(ここが切れ)…暗き茶の間に妻と客

春の雷が鳴った……。灯りのついていない茶の間には妻とその客がいる…。

というような感じですね。とても雰囲気のある一句です。ちょっとしたドラマが起こりそうな気がしませんか?それは『春雷』という季語の効果も影響しています。上にも書いたように生き物が動き出すきっかけとして鳴るのが『春雷』ですから。もし意味を知らなかったとしても春雷にはドラマチックなイメージがあります。

春雷のあとの奈落に寝がへりす 橋本多佳子

鑑賞:春雷が鳴った瞬間、当然明るくなるわけですがそれは一瞬です。すぐに暗くなりますよね。それを奈落と表現したのがポイントです。

しかもそこに飛び込むわけでも、覗き込むわけでもなく、寝返りするわけですから面白い。このように、大げさな言葉に続けてお茶目な言葉を続けるのも俳句の作り方としては大いに参考になります。

春はどうしても眠たくなる季節。雷でふっと起きたとしてもすぐに眠りに舞い戻るわけです。

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