夏の季語『向日葵(ひまわり)』
ヒマワリはキク科の1年草で最大3メートルにもなりますが、最近ではプランターで育てられる小ぶりのものをよく見かけますね。
種や実は油などに加工され、花は観賞目的として育てられます。
原産は北アメリカという説が有力で日本にも古くから渡来していたようです。
夏の季語としての向日葵は明るいイメージだけでなく、花の終わり頃のうなだれたような不気味な感じも利用されることがあります。花の始まりから終わりまで観察して自分の印象を育てておきましょう。
文語にすると『ひまはり』という風に「わ」が「は」になりますので注意して下さい。
『日車(ひぐるま)』『日輪草(にちりんそう)』『日向葵(ひなたあおい)』などと呼ばれることもあります。
※太字は全て季語です。
季語『向日葵(ひまわり)』の俳句と鑑賞
向日葵の蕊を見るとき海消えし 芝不器男
鑑賞:『蕊』は『しべ』と読みます。オシベ・メシベのシベのことです。この句は少し複雑な構造になっていて、
ヒマワリのシベを見る・観察するとき、海が消える。
という具合に書かれているわけですが、つまり背景には海があったことを句の最後で気づく仕組みになっているわけです。
ヒマワリの細部に気をやると背景の海へ意識が行かなくなることを書いた一句です。ヒマワリを観察する自分を観察した結果出来た一句ですね。この〇〇を観察する自分を観察するというのはよく使われる手法ですから覚えておきましょう。
向日葵や信長の首斬り落とす 角川春樹
鑑賞:向日葵の句では有名な一句です。この信長はもちろん織田信長のことです。夏という季節と野望にひた走った信長という人物は響き合うような気がしますね。
個人的に、このヒマワリは花の終わり頃の大輪をだらんと垂れたヒマワリなのではないでしょうか。花びらもだらりとしていかにも首を差し出す武士のように見えます。
「信長」「斬り落とす」という言葉で刀を連想し、その刀が陽の光を跳ね返すかのような強烈な印象を与える一句です。
向日葵や起きて妻すぐ母の声 森澄雄
解説:ヒマワリが咲いているので夏。おそらく夏休みではないでしょうか。子どもたちが朝から騒いでいる。起きた妻がすぐ母の声になっている。と、そんな一句です。
いかにも日常の一コマ。これから暑い日が続くんだろうなぁと感じですが、なんとなく良い家族のように感じてしまいます。
これは『向日葵』という季語の効果で、例えばこれが『紫陽花(あじさい)』だったらちょっと鬱々とした感じになってしまいます。
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