夏の季語『夏』
解説
四季の中で最も激しい季節が夏ではないでしょうか。樹木は生い茂り、あらゆる生命が活発に活動します。もっとも最近ではあまりに暑すぎて、生態系も変化してきていますが…。
さて、夏は前半の雨季(梅雨)と後半の乾季に分かれると大別されます。5月初旬の立春から8月初旬の立秋までを夏と呼びます。初夏(しょか)・仲夏(ちゅうか)・晩夏(ばんか)を合わせて三夏。夏の90日間のことを九夏といいます。
その他の言葉では『炎帝』『朱家』『炎夏』などとも言います。
季語『夏』の俳句と鑑賞
算術の少年しのび泣けり夏 西東三鬼
鑑賞:有名な一句です。
「算術の少年」というのは今で言えば「算数の少年」ですね。これは俳句的な縮め方ですが、要するに「算数をしている少年」ということになります。
この他にも例えば「盆の町」と言えば「お盆の時期の町」のことを指します。俳句は短いですからこのような省略がよく用いられます。これがわかりにくいため俳句は難解なイメージがついているのかもしれませんね。
さて、この句、算数をしている少年がしのび泣いていたというのです。もうおわかりでしょう。算数の宿題かなにかで苦労しているということです。
切れは「算術の少年しのび泣けり」「夏」となり、夏を読む前に一呼吸入れましょう。その方が夏の暑さの中で苦労している少年の姿がありありと想像できます。
鼈をくびきる夏のうす刃かな 飯田蛇笏
鑑賞:俳句はモノを描くことで、具体性をもたせます。
「鼈」は「スッポン」と読みます。これは少し難しい感じですね。しかし、それ以外は難しくはありません。スッポンを料理する夏のうす刃が書かれているだけです。しかし、スッポンという精力のつく料理。それを切る薄刃の鋭利さが不気味で、怖いくらいです。夏にぴったりだとは思いませんか?
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