春の季語『暖か(あたたか)』

春の季語『暖か(あたたか)』

解説
季語では四季の温度の感じ方を春の『暖か』、夏の『暑し』、秋の『冷やか』、冬の『寒し』と使い分けます。春になると当然暖かくなりますよね。そのものが季語になっています。

よく使う言葉ですから俳句も作りやすいんじゃないでしょうか。

この季語を使った俳句の場合、気分的にあたたかなことを書くのも良いですし、そう言われればなんとなく暖かな感じがするなということことを俳句にするのも良いでしょう。

季語『暖か(あたたか)』の俳句と鑑賞

肩に手をかけて話せば暖かし 大場白水郎

鑑賞:気分的なあたたかさを言い留めた句ですね。

普通にただ話すよりも肩に手をかけて話した方があたたかい感じがします。言われてみれば当たり前のようですが、それに暖かさを感じるという細やかな感性が素晴らしいと思いませんか。

逆に言うと、肩に手をかけて話さない場合も暗に示唆しています。その場合は暖かくないわけです。

暖かや芯に蝋塗る造り花 芥川龍之介

鑑賞:大小説家の芥川龍之介もたくさん俳句を残しています。

『暖か』を「や」で切ってありますね。その後を続けて最後は名詞(モノ)で締めくくっています。お手本のような俳句です。

造花を作る際にその芯に蝋を塗っている様子を見て、完成すれば目には見えないけれど心遣いがあるなぁと感じたのでしょう。これは二物衝撃の句です。

※二物衝撃:一見関係のない2つの事柄を俳句の中で取り合わせること。

あたたかや布巾にふの字ふつくらと 片山由美子

鑑賞:こちらも二物衝撃の句です。布巾(ふきん)におそらく「ふきん」と書いてあったのでしょう。
その「ふ」の字がふっくらとして見え、それを暖かいと感じたというわけです。

ひらがなで「ふ」ですから、子供のものなのかもしれません。春は入学・進学の季節でもありますから。

さて、この句、

「ふきんにふのじふつくらと」

リズミカルに「ふ」の音が入っています。もちろんこれも計算の上で作られたのでしょう。「ふ」という音も暖かい感じがしますよね。

不健全図書を世に出しあたたかし 松本てふこ

鑑賞:若手俳人の松本てふこの句です。

不健全図書というものはおそらく読んで字のごとくでしょう。おそらく出版に関する仕事をされているのではないでしょうか。だから「世に出し」なのです。しかしこの行為が「あたたかい」かどうか。どう思われますか?

「不健全図書がある世の中はあたたかいじゃないか」という作者の気持ちかもしれませんね。出してはいけないと差し止められる場合だってあるわけですから。

また、出版の仕事をしているのであれば、どんなものでも「世に出したら」ひと仕事終わったわけです。ホッとした気持ちで会社を出ると「あたたかさ」を感じた。ということなのかもしれません。

堅いことは言わず、この俳句の意外性を面白がりましょう。

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