冬の季語『初冬』

冬の季語『初冬』

解説
冬は初冬・仲冬・晩冬と3つにわかれますが、初めの方の冬を言います。今の暦(こよみ)では11月がそれにあたり、自然はまだ秋の気配を残しつつ徐々に冬に入ろうとしている感じですね。朝晩が冷え込み本格的な冬の到来を予想させる時期です。『冬浅し』『冬初め』とも言います。

季語『初冬』の俳句と鑑賞

初冬の徐々と来木々に人に町に 星野立子

鑑賞:読み方は「はつふゆのじょじょとく、きぎにひとにまちに」と読みます。これでわかるように徐々と来(く)で軽く切れてますね。

季節の変わり目はいっぺんにくるわけではありません。少しずつ来るわけです。木々もいきなり枯れ木になるわけではなくまだ紅葉しているものも多くあるわけで、その様子を詠んだ一句ですね。

リズムが素晴らしい。「初冬~徐々と来」までは少し硬いリズムを感じます。そこから「木々に人に町に」と後半は少しなだらかな感じ。最後の字余りも余韻を感じさせます。

初冬の大塵取に塵少し 阿部みどり女

鑑賞:渋い句ですね。大塵取の読み方は「おおちりとり」です。お掃除で使うほうきとセットのやつですね。塵は「ちり」と読みます。

大きな塵取(ちりとり)に塵(ちり)が少しだけある。それだけです。

初冬というまだ秋の透明感のある季節に塵が少し残っているのが気になるのでしょうか。年末にかけて忙しくなる時期なのでそれでも見なかったことにしているのかもしれません。

個人的に使われていない時の掃除道具になんとなく哀愁を感じるので、冬の寂しさみたいなものも感じてしまいます。

初冬や鼻にぬけたる薄荷飴 小川軽舟

鑑賞:小川軽舟は今も現役の俳人です。結社の主催もされていて、わたしなどから見たら大俳人のひとりですね。

さてこの句、薄荷飴は「はっかあめ」と読みます。すごく上手いと思いませんか?少しずつ寒さを感じてくる冬のはじめを薄荷飴が鼻に抜けるところで感じたというところが素晴らしい。

今だったらフリスクやミンティアで感じられそうなことですよね。どんなところにも俳句の素材は転がっているんだなぁと思います。

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