冬の季語『火事』

冬の季語『火事』

解説
どうして火事が冬の季語になるのか?という疑問を持たれるかもしれませんが、冬は空気が乾燥していますし、暖房などで火を使うことも多い。また年末年始は忙しいですから火の不始末も起こりやすい。そういうことを踏まえて、歳時記を作る際に「火事は冬の季語にしよう」と決められたわけです。このようなことは他にもありますが、とりあえずは歳時記に従って作りましょう。
もしどうしても納得できないのであれば、その季語を使わないという手ももちろんあります。

暗黒や関東平野に火事一つ 金子兜太

鑑賞:先日亡くなられた金子兜太氏の作品です。この句の素晴らしいところは、暗黒、関東平野と続くことで具体的で大きな闇を連想させたところに火事一つがポツンと出てくるところでしょう。
関東平野と書かれていますから、見渡すような視点です。そこに火事が一つだけ。見渡しているわけですから近くで見ているわけではありません。遠くの方で小さな火事がある。
でもそれは、そこに人間の営みがあるからこそであり、暗闇の中の唯一のアクセントになっているわけです。様々な思いが深いところからこみ上げてくるような句です。

火事を見し昂り妻に子に隠す 福永耕二

鑑賞:昂りは「たかぶり」と読みます。興奮しているというような意味ですね。この句を文章にすれば「火事を見た興奮を妻や子供には内緒にする」というような意味になります。
これだけでも十分にドラマがあります。
他人の家の「火事」というものは見たくなりますよね。野次馬根性というものです。しかし、それは人間の怖い本性のような気がします。人の不幸を楽しむような、「火事」を見ながら「もっと激しく燃えて欲しい」という破壊的な衝動のようなものも確かにあります。
妻や子に知られたくないというからには、そのような感情があったのでしょう。俳句は「物を見る」わけですが、この句のように人間の心の中を「見る」というやり方もあるわけです。そういう俳句を作るときは、読者がなんとなく納得できるものを持ってこなければなりません。

こちらも参考にどうぞ

冬の俳句の作り方

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