秋の季語『甘藷(さつまいも)』

秋の季語『甘藷(さつまいも)』

解説
サツマイモは秋の季語です。甘藷(サツマイモ)と読んだり、甘藷(かんしょ)と読んだりします。この辺は何音の季語が必要かで使い分けることができますね。でも、「さつまいも」というかわいい響きは俳句に活かしたいところです。

ところでサツマイモはヒルガオ科の植物で、原産地は南米だそうです。17世紀ごろに琉球から長崎・鹿児島へ広がり、江戸に持ち込まれたということです。

干しても蒸しても美味です。しかし『焼き芋』と言えば冬の季語になりますので要注意。

同様の意味のものに
『藷(いも)』(これは一文字でサツマイモの意味です)『甘藷(かんしょ)』『唐芋(からいも)』『甘藷堀り(いもほり)』『甘藷畑(いもばたけ)』
などがあります。

※太字は全て季語です。

季語『甘藷(さつまいも)』の俳句と鑑賞

甘藷を掘ることを暮色の中に止む 山口誓子

鑑賞:大俳人の山口誓子の一句です。「甘藷を掘る」は恐らく「いもをほる」と読むのでしょう。「甘藷掘り(いもほり)」というくらいですから。

それにしてもまるでミレーの晩鐘のような絵画的な俳句だと思いませんか?サツマイモを掘るという行為は楽しいものですが、一日中作業するとなると相当に疲れそうです。それをここでは周囲が暮色になるまで、つまり日暮れ近くまで行っているということですね。

「止む」という俳句の終わり方がいかにも「今終えた」感じが出ています。暮色の中で一日のイモ掘りを終えた瞬間の句ということです。

甘藷掘りしその夜の雨を聞きにけり 山口波津女

鑑賞:「甘藷掘りし」の「し」は「甘藷を掘った」という過去形の「し」です。サツマイモを掘ったその夜、雨の音を聞いた。という意味です。意味はとてもわかりやすい。

しかし、この句の意味はなんでしょう?
よく耳にする言葉です。「この句の意味は?」

それは俳句を楽しむのにあまり良い態度ではありません。このように言い換えましょう。「この俳句で何を感じる?」「何を感じた?」

俳句の中に必ず「標語」のような教えや「意味」があるというのは間違いです。なんとなくクスっとしたり、なんとなく楽しい気分になったり、なんとなく不気味だったり、それを感じて楽しむのが俳句です。

もちろんそれを言葉にして表現できれば素晴らしいことですし、そのような練習も時には必要かもしれません。しかし、ここは初心者向けの俳句のサイトです。まずは楽しみ方を覚えましょう。

わたしはこの句にはいくつかの感じ方があると思います。例えば

・サツマイモを掘るという労働に疲れすぎてなかなか寝つけずにいて、ポツポツという雨の音を聞いた。

あるいは

・今日はサツマイモを掘ったが、夜になって雨が降り出した。掘ってる最中に降らなくてラッキーだった。

このような感じでしょうか。わたしは前者の方じゃないかなぁと思っています。理由はとてもシンプルで、「雨の音」という言葉はどこかさみしげな感じがするからです。しかし、雨はまたサツマイモが育つのに必要な恵みの雨でもありますよね。そこから、どことなく優しい土の匂いのする生活が漂ってくるように思うのです。

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