秋の季語『秋の声』
解説:
物の触れ合う音、風にそよぐ木の葉の音、虫の鳴く音などから受ける物淋しい感じです。
『秋の声』は鈴虫やこおろぎなどの虫の鳴く声と関係が深いのでしょう。もちろん、風の音や雨の音も秋の声です。
しかし、それだけではなく人間が感じる秋の気配を『秋の声』として表すこともあります。
例句:
外を歩いていると、いつも間にか自分の影が夕日に照らされ、長く伸びていることに気付きました。(「くれてをり」の「くれる」とは「暮れる」のことで夕方の時間帯を指します)その影を見て、秋の気配を感じ、急いで家に帰ろうと思います。
人と話していても周囲の虫の音がよく聴こえる。虫の声が大きいのではなく、人間の声が静かなのだという逆転の発想をした句。鷹羽狩行さんの句は少しばかりヒネリが効いていて素敵ですね。
『秋の声』といえば
個人的には初秋に聞こえてくるものだと思います。その声は小さくかぼそく、どことなく不安さえ憶えさせます。この声は、耳を研ぎ澄まし傾けないと、聞き逃してしまいそうです。これは、夏の欠片であり、消えていく儚さを見せつけながら、どことなく秋を呼び寄せます。
立秋を過ぎても、日中はまだまだ夏の暑さが続きますが、朝、窓を開けるとヒヤッとした空気に触れることがあります。夏は徐々に秋へと移ろいでいきます。
夏と初秋の空気が徐々に混ざり始め、やがて夏が消えていき、夕暮れになってツクツクボウシやヒグラシが、夏の終わりを告げるように鳴いています。
風が夏のものとは違ってきて、空気の質感もがらりと変わり、その気配を見せ始めます。まず夕方や夜に涼しさが出てきて、やがて朝も秋の涼しい空気に覆われていきます。
空気が変われば、人の体感温度も変わり、肌で秋の訪れを感じるようになります。
これも分かりやすい秋の声です。もっと意識すれば、風にそよぐ木の葉の音や虫、鳥の声が変わっていたことにも気づくはずです。
辺りを見渡せば、稲穂が実をつけ始め、青い栗も少しずつ大きくなるなど、秋への準備を始めています。
秋の声は、人が意識すれば、あちらこちらから聞こえてきます。
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