秋の季語『虫』

秋の季語『虫』

解説:虫一般をいうのではなく、秋に鳴く虫を総称して虫という。雄のみが鳴き、雌をひきつける。虫はコオロギ科(コオロギ、鈴虫、カネタタキなど)とキリギリス科(キリギリス、馬追、くつわむしなど)とに分かれる。

虫の夜草にも声のあるやうな 黒沢孝子

鑑賞:とてもにぎやかに秋の虫の声が聞こえてきます。あまりにもにぎやかすぎて、もうそれは虫の声ではなくて、地面に生えている草がおしゃべりしているかのようにも感じるのです。

『虫』といえば

秋の夜の草むらの主役のようです。秋の深まりとともにその声はより一層大きさを増していきます。
昼も夜も秋はどうして、こんなに鳴く虫が多いのでしょうか。とても神秘的です。
秋は夜が長いので、何の音もないと人間が寂しがるだろうからと、神様がプレゼントしてくれたのでしょうか。

初秋では、秋の便りを運んでくれる使者であり、中秋では、たくさんの音で人の耳を楽しませてくれ、晩秋では、秋の幕を静かに閉じる幕引きのような役割を担っているかのようです。
神様がプレゼントしてくれたBGMは大変多彩で人の耳を飽きさせません。それどころか、子守歌のように単調なリズムもあって、秋の空気のなかに気持ちよい場所を作りだしてゆっくりと眠りの世界へといざなってくれているようにも思うのです。

虫たちは、秋の夜、確実に冷えていく空気のなかで、人間の耳には決して届かない命のやり取りを行いながら、精一杯命を燃やしているようにも感じます。
そしてまた人間たちが寝てしまっても、虫の声は途絶えません。実は目に見えないだけで、まるで生きている人間にだけに美しい音色を聞かせるだけではなくて、死んでしまった人間の魂にまでその音を届けているかのような、妖艶な一幕がそのようなやりとりがされているのかもしれません。

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