秋の季語『秋の灯(あきのひ)』
季語の解説:秋の夜は長いせいか、空が澄んでいるせいか、家屋内外の灯火がいかにも澄明な感じとなって輝いてくるようである。また、肌寒い季節がらあたたかそうな気持ちにもなる。
例句:
東京タワー総身秋の灯となれり(多摩茜)
鑑賞文:秋の日は夜が長くなってきて、どの季節よりも早く灯が欲しくなります。そんな灯の中でも東京タワーは大きなトーチのように見えます。この巨大なトーチは人々の生活を見守るそんな安心感を与える存在のように感じます。
「秋の灯」といえば
私は、安定と安心のできる希望の灯だと思います。
自然の秋は、日増しに夜が早く来て長くなっていき、灯が恋しく感じる時間帯が増えてきます。
そんな、人間的にはぬくもりと安心感を与えてくれてとても落ち着きます。
さて、人生の秋はいかがでしょうか。
年齢的には、現在では平均寿命が80歳を超えて50代以降が秋の領域に入っていくのでしょうか。そんな人生の秋の灯とはどのようなものなのでしょう。
まだまだ消える気配を微塵もみせません。それどころか、若い頃の情熱を再び燃料として別の意味でその灯は激しく燃え上がり、ますます精神的には健全に若返っているかのようでもあります。
道具としての灯火は蝋の長さや油の量で、目視できる物理的な計算が可能なものですが、人間の場合は、その灯の原料が何なのか、そのパワーはどのようなものなのか、その量はどのくらいあるのか、人それぞれ違うので計りきれません。
人間でいう春の灯は、若くそれでいて心細い細くゆらめきがあり、まだどことなく心配したくなるような燃え始めであり、夏の灯は大火であり豪華でもあります。そして秋の灯は、その夏の灯を使い慣らしたように安定感と安心感をもって充実している時であるかも感じます。
私は、人生の中では秋の灯をいつまでも長く灯しておきたいなと私はそう思います。
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